金と銀の物語
1.新大陸発見と金・銀

315世紀のヨーロッパは、科学の発達に伴い、大航海時代を迎えていました。ポルトガルやスペインなどの強国は、未知の富を求め、競って海外へと乗り出したのです。 かの有名なクリストファー・コロンブスも、マルコ・ポーロの、「東方に黄金の国あり」という報告により、日本に向かうつもりが迷子になり、思いがけなく新世界、アメリカ大陸発見という偉業を成し遂げたのです。
2.銀の意外な才能
銀は毒素に対し敏感な反応を示すことでも知られています。その昔、お殿様の毒味役は、銀の箸でした。当時の毒は『毒砂』と呼ばれていた硫ヒ鉄鉱で、その成分中の硫黄と銀の箸が反応し、黒くなることを利用したのです。
さらに銀には水を浄化する作用があります。銀は極めて微量、水に溶解する性質を持つのですが、この溶液が、非常に薄くても水中の微生物を殺菌するのです。その殺菌力は塩素の約10倍にあたります。
3.錬金術師たちの夢
金属変成術、いわゆる『錬金術』は中世を通じ一大ブームとなりました。
当時のヨーロッパにおける自然学の権威、アリストテレスが、地上の物質はすべて、組合せによって物質の変換ができると発表したことにより、科学者ばかりではなく、成功欲、金銭欲にかられた一般市民の間でも大流行しました。
残念ながら錬金術師達の目論見は失敗に終わりましたが、実験を通じて得た知識や発見は、近代化学を語る上での大きな功績となりました。
溶かして型に流される金
4.金の産地
これまでに採掘された金の量は、容積にすると代々木オリンピックプールの二杯分、約10万トンといわれています。そして、あと地球上に残された埋蔵量は、その半分の5万トン弱だと予想されています。
今日、世界の産金は、南アフリカのウィットウォータースランド丘陵地帯の金鉱に大きく依存しています。地下3,000 メートルの坑道からエレベーターを使用し、金鉱石を地上に運びだしますが、1トンの金鉱石からとれる金の量はわずか5グラム程度とのことです。
掘り出された金鉱石
5.K24、K18の意味
指輪やネックレスなどの金の装身具はほとんどが18金といわれる合金で、商品には「K18」という刻印が押されています。この「K18」は金の純度を表しています。
「K」は「Karat」(カラット)の頭文字で、「K24」が純金を意味します。「K18」とは、24分の18(18/24)、つまり75%が金であるということなのです。
純金のままでは柔らかすぎてしまうため、全体の25%ほど割り金といって他の金属(銀や銅など)を加えて装身具として必要な強度を持たせているのです。
最近では技術の進歩により、硬化純金と言われる堅い純金を使用したジュエリーもできています。
ちなみに、「K24.G.P.」は純金メッキという意味ですので、お間違いなく。
6.白金とホワイトゴールドの違い
ホワイトゴールドという言葉を直訳すると白金になりますが、この2つは全く別なものです。白金とは、最近ではあまり耳にしない言葉ですが、プラチナのことです。
そしてホワイトゴールドとは、金に他の金属を混ぜて作った合金のことなのです。「金と銀の物語 5」で説明した通り、18金という合金は、金の他に25%だけ他の金属を加えるのですが、この加える金属によって出来上がった合金の色が変わるのです。
ニッケル、銅、亜鉛を加えると白い金が出来上がります。他にも銅だけを加えると赤くなり、銀だけを加えると緑色がかった黄色になります。ピンク色の金なんていうものもありますよ。
7.金や銀の重さ
金を手にしたとき、その見た目を越えた重さに驚いた経験はありませんか?
例えば、1Kgのインゴットの大きさはおよそ115mm×52mm、厚さ8mm。この手のひらサイズの小ささで水1リットルと同じ重さなのです。具体的に比重で言うと、純金は19.34。同じ体積の水と比べて19.34倍も重いのです。そんな重い金で出来た小判が入った千両箱を、ねずみ小僧は肩に担いで屋根から屋根へすいすいと・・・・・ちょっと無理なような気がしますが。
ちなみに、プラチナはさらに重く、比重は21.45。銀は金の約半分の10.53です。
8.金婚式・銀婚式
結婚25周年を記念する銀婚式や50周年の金婚式は日本でもなじみのあるものになっていますが、そもそもは欧米で年数にちなんだ品物を送った習慣に由来します。例えば、1周年は紙、5周年は木といったように決められており、25周年は銀、50周年は金ということから銀婚式、金婚式と呼ぶようになりました。
主なものは下記の表の通りです。
年数 |
15 |
20 |
30 |
40 |
75 |
品目 |
水晶 |
陶器 |
珊瑚 |
ルビー |
ダイヤモンド |
9.JAPAN その由来は?
「日本」と書いて正確には「にっぽん」と読みますが、これが英語になるとJapan(ジャパン)になってしまう。なぜ「NIPPON」ではないのだろうと思われたことはありませんか?
その由来ははるか昔、マルコ・ポーロにまで遡ります。マルコ・ポーロといえば「東方見聞録」で有名ですが、その中で日本のことを「黄金の国、Cipangu(ジパング)」とヨーロッパに紹介しています。この「ジパング」が語源となり「JAPAN」になったのです。
金閣寺や金箔貼りの仏像などを見て「黄金の国」となってしまったのでしょうか、とにかくそんなすごい国が東のはずれにあると有名になり、「JAPAN」は広まったのです。日本で金がとれなかったら「NIPPON」になっていたかもしれませんね。
10.世界に誇る伝統工芸
東京銀器も伝統工芸ですが、日本でもっとも有名な伝統工芸の一つに金沢の金箔があります。金という金属はとても柔らかく叩けば叩くほど延びていきます。この金を厚さ0.1マイクロメートル(10,000分の1ミリ)まで叩くと、1gでなんと50cm四方の大きさにまで延びるのです。
金箔で有名なものといえば、鹿苑寺、通称金閣寺でしょうが、他にも多数の美術品に使用されています。もっとも、最近では美術品だけでなく料理やマッサージクリームなどにも使用され、金箔入りのお酒やお茶、ケーキなどが売られています。ただ、金は無味無臭で、塩酸3対硝酸1の割合の混合液(王水)でなければ溶けませんから、味には影響しないでしょう。
でも、おめでたい席などで金箔入りのお茶なんて、さらにおめでたい気分になるのでは。
11.2つのオンス
重量の単位である「オンス」に2種類あることをご存じですか? 欧米で一般に使われているオンスは1ポンドの16分の1、28.35gで、輸入食材の内容量などで「○○oz.」と書かれているのを見たことがあると思います。
もう一つは正確にはトロイオンスというもので、1オンスは31.1035gです。こちらは貴重物・薬量の計算に使われ、純金の1/2オンスコインなどのオンスはこちらになります。
海外の金相場は1oz.=○○$と表されますが、このオンスもトロイオンスで、これを1g当たり何円かという日本の金相場に換算するときは、[海外相場×為替相場÷31.1034g=円g単価]という計算をします。
12.銀座があるなら金座は?
銀座といえば日本有数の繁華街で、一昔前は地方の商店街を「○○銀座」などと呼んでいたものです。日本で一番高い土地であり、大人が楽しむ町として根強い人気がありますが、この地名の由来は、江戸時代に幕府の銀貨製造所がこの地にあったから。
だから銀座となったわけですが、では小判を造っていた「金座」は?というともちろんありました。江戸時代が終わって明治になり、小判が製造されなくなると金座はなくなり、そこに建てられたのが今の日本銀行なのです。地名としては残っていませんが、まさに日本の金座ですね。
13.売れている抗菌グッズ
数年前から目にするようになった様々な抗菌グッズ。文具やトイレ用品、台所用品、車のステアリングとその品数は増える一方です。そんな抗菌グッズに銀が使われていることをご存じですか?すべての抗菌素材に使われているわけではないですが、抗菌の陶器や繊維には多く使われています。
例えば、ある紳士靴下のメーカーでは銀メッキしたナイロン繊維と綿を混ぜた糸で編んだ抗菌靴下を販売しています。この混紡糸に1万5千個の菌を植え付けたところ、18時間後には20個以下に減少したそうです。
日本人はきれい好きが多いですから、この分野での銀の需要はさらに増えていくかもしれませんね。
14.黒さが売りです
ついうっかりシルバーアクセサリーを付けたまま温泉に入ってしまったら、たちまち銀が真っ黒になってしまった、という経験は有りませんか?これは温泉の中に含まれている硫黄に銀が反応して硫化が起きてしまうからなのです。
長い間しまっておいた銀のアクセサリーが真っ黒になってしまったから捨ててしまった、というもったいない話も聞きますが、この困った化学反応を逆手に取った仕上げ方法がいぶし仕上げ、または古美仕上げというものです。
全体を黒くしてしまう物もありますし、一度全体を黒してから軽く磨き、凹んだ部分だけ黒く仕上げるといった物もあります。ピカピカに光った銀製品もきれいですが、いぶし仕上げの銀製品も深みのある渋さがうけて人気があります。
純銀製 湯沸(霰)
15.貴金属の品位検定マーク
形が同じなら純金で出来ていてもK18でも金メッキ物でも全く同じに見えます。重さの違いがあったとしても、手に取っただけでは正確な金の純度は分かりません。そこで頼りになるのが品位検定マークという制度です。
日本では造幣局が検査をして、その商品の貴金属の成分を確かめて合格品には国旗のついた刻印を押してくれます。つまり、国がその貴金属の確かさを証明してくれるという物。指輪の内側やネックレスの留め金の所に押されています。必ず押してあるという物ではないので、押してないからといって「偽物?」と心配することはありません。
おりんの底の拡大写真
・「K18]の刻印の下に打刻してあるのが検定マーク
・左側が国旗で右側にはK18を意味する「750」という文字が刻まれている
16.銀はなぜ銀色なの?
銀という物質がなぜ銀色に見えるのでしょうか?それは簡単に言うとほとんどの光を反射させてしまうからなのです。
そしてこの特性を生かしたものが鏡です。鏡はガラスの片面に硝酸銀を薄く塗り、それがはがれないようにコーティングした物なのです。硝酸銀とは銀を硝酸に溶かして出来る無色透明の液状結晶のことで、医薬品、写真、銀メッキなど様々な分野で使われている物です。
鏡を覗き込むようにみると顔の輪郭がだぶって見えることがありますが、これは鏡のガラス表面に映った顔とガラス裏の銀に映った顔が同時に見えるからで、決して乱視になってしまった訳ではないのでご安心を。